たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
「(……迷惑なんかじゃ、ありませんっ。嬉しいですっ)」
「……それなら、よかった。ストーカー的な発言すぎるかなーと思って、引かれたらどうしようかって内心焦ってたから」
携帯電話を使って文字にしなくても、彼は今の私の言葉も拾ってくれた。
表情と、口の動き、仕草から拾ってくれる。
たった、それだけのことだ。
だけど、それだけのことを少しも面倒くさがらずに、こんなにも自然にしてくれる人が現れるなんて、思っていなかったから。
「(……登録、します。絶対、絶対、します!)」
「あはは。はい、よろしくお願いします。ああ、それと、俺のことは樹生って呼んで。……苗字で呼ばれるの、あまり好きじゃないんだ」
「(わ、わかりました……樹生、先輩。本当に、ありがとうございます……っ)」
「……こちらこそ、俺みたいな奴を信じてくれてありがとう」
「(……え、)」
「それじゃあ、また明日ね。─── 栞」
この時感じた“違和感”の理由を私が知るのは、まだ先のこと。
能天気な私は“栞”と、私を呼んだ彼の背中を見つめて、高鳴る胸に、そっと手をあてた。
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『Clematis(クレマチス)』
美しい心