たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
そんな栞に、俺は自分から踏み込んで、関わりを持った。
そこに、大きな正義感や興味、そんなものは微塵もなかった。
当たり前だけど、栞に同情したわけでもない。
あの時はただ、なんとなく。
なんとなく、栞のことをもっと知りたいと思ったんだ。
ただなんとなく、栞のことをほっとけないと思って、側に寄りたいと、そう思った。
* * *
「樹生……また、サッカー部の奴に聞かれたんだけどさ。あの子と、樹生は毎朝一緒に来てる、やっぱり付き合ってんじゃーねーか、って……」
開口一番。
教室に入ると早々にアキにそんな話題を振られ、思わず溜め息が零れた。
毎朝一緒に来てる……なんて、自分は毎朝俺達を見てるって、そう言ってるようなものだ。
「……そのサッカー部の奴は、俺のファンなの?」
「うーん……そうじゃなくてさ。もしかして、あの子のこと気になってるんじゃない?」
(……そうだろうね)
俺の冗談にも真面目な返事を返すアキは、鈍感だ。
鈍感で、真面目で、純粋で。人の心を疑うことを知らないアキと栞は、なんとなく似ているのかもしれない。