たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
図書館に入るといつもの場所に座り、参考書を広げた。
なんといっても一応、受験生。
静かな場所で勉強したいと思うけど男子校の図書室なんてサボるためのスポットでしかなく、壁に貼られた「図書室内では静粛に」という注意にはなんの効力もなかった。
だから俺はよく、アルバイトのない日はこの図書館へ足を運ぶ。
この公共の図書館から家までは約5分ほどの距離で、駅から家へ向かう途中にあるため通うにはとても便利だ。
家に帰って勉強するよりも、俺は図書館のこの落ち着いた独特な空気の中で机に向かうことが好きだった。
─── その日は、どれくらいその場所に座っていただろう。
夕陽の光がふと目に入り、促されるように顔を上げた。
(そろそろ、帰ろうかな……)
そしてそれは、そんなことを思いながら、壁に掛けられた時計に目を向けた時だった。
「─── !」
視線の先。
向こうは気付いているのかいないのか……
そこにはここ最近、毎朝会話を交わす女の子がいて、俺はその姿に思わず自分の目を疑った。