たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
(なんで、こんなとこに。って、駅は同じなんだし、いても可笑しくないんだけど……でも、)
立ち上がろうとして、思わず躊躇(ちゅうちょ)した。
視線の先には、熱心に机に向かっている栞の姿。
栞の隣は空席で、それを見てなんの躊躇いもなくそこに移ろう、栞に声を掛けようとした自分に気付き、戸惑ったんだ。
(……別に、でも、知り合い……っていうか、友達、だし)
そんな風にしてしまうのは、昼間のあの付き合ってるとかなんとか、その話が効いているのかもしれない。
不本意だけど、つい意識してしまっているのかも。
だけど、そんな風に躊躇っていれば、俺の視線に気が付いたのか───
「─── 、」
「─── 、」
突然顔を上げた栞と、まるで何かに導かれたかのように視線と視線が交わった。