たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
「……栞が応援してくれるなら、受験勉強も頑張らなきゃ、なんて」
明らかにそうは思っていないだろう先輩が、からかい口調で言葉を零し、再び歩き出す。
……こんなに、カッコよくて優しくて。
医大を進路に選ぶくらいに頭も良くて、広い心を持っていて、気遣い上手。
現にほら、今だっていつの間にか車道側を歩いてくれている。
この、どこからどう見ても完璧な先輩を、女の子達が放っておく理由がないよ。
モテるんだろうなぁ……なんて、そんなことを思うことすら不躾だった。
もしもうちの学校に先輩がいたら、先輩は女の子達の憧れの存在として君臨するに違いない。
(……そういえば、先輩は、好きな人とかいるのかな)
心の隅で考えたことに、胸が小さく軋んだ。
もしも、もしも。
もし先輩に彼女とか、好きな人がいたら、どうしよう。
そしたらこんな風に甘えるのは失礼だし、先輩に迷惑だろう。
そんなことを考えながら先輩の背中を追いかけると、不意に私に視線を向けた先輩が再びゆるりと口を開いた。