たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


「……栞と一緒にいると、色んな発見がある」


「……っ、」


「医者が似合う、なんて。言われたことなかったから、自分で驚いた」


「(え、)」


「あ。そう言われて嬉しく思う自分に、自分で驚いたってことね」


「(……先輩?)」


「そっか。俺、医者に向いてるのかな。栞がそう言うなら、なんかそうなのかもって思えてきた」



駆け抜ける風が、先輩の前髪を揺らして目元に影を作る。


優しく目を細めた先輩と目が合えば、不意に伸びてきた手が私の髪に、優しく触れた。



「……文字って、感情を伝えることも出来るんだね」


「(……感情?)」


「例えば、不安な時は少し文字が小さくなる。嬉しい時は、文字が生き生きとしてる。遠慮してるってときは、文字が揺れてる感じで」


「……、」


「驚いたときは文字がほんの少し丸みを帯びて、誰かに何かを必死に伝えたいときは……文字の終わりが、無意識に跳ねる」


「……っ、」



「言葉を声にしなくても、大切な気持ちは伝えられるんだ……って。改めて、知ることが出来た」


 
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