たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


「っ、」


(……樹生先輩の手が、これ以上冷たくなりませんように)



突然の私の行動に強張った手。


それに気付かぬ振りをして、目を閉じると心の中で静かに願う。



どうか、どうか。


先輩が、笑顔でいられますように。


先輩の毎日が、幸せで溢れますように。


私に起きる予定の幸せの分も、先輩にあげていいです。


私には、これ以上幸せなことがなくてもいいから、だから。


先輩が、ずっとずっと笑っていられますように。


優しい先輩が悲しむようなことが、起こりませんように。




先輩が。

ずっとずっと、優しいままでいられますように。


 
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