たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
「(ま、ま、また明日、です……っ!!!)」
「え、」
そんな先輩と自分の気持ちを振り切るように、必死にそう言うと、私は家までの道を走って帰った。
その途中、後ろを振り向くことは出来なかったけれど。
家に入る直前─── なんとなく。
なんとなく、見えるはずもない曲がり角の向こうには、今もまだ先輩が立っている気がして。
「(私の、ばか……っ)」
高鳴ったままの鼓動を隠すように、私は乱暴に玄関のドアを開けて家に入ると、そのままそこに、力尽きたようにしゃがみこんだ。
冷たい大理石の上に、たった1枚落ちていた桜の花弁。
それに気が付いたのは、熱を持っていた身体が、ようやく落ち着いた頃だった。
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『Viola(ヴィオラ)』
少女の恋