四百年の誓い
 「……」


 「幹事長は本妻との間には男子が生まれず、娘が一人だけ」


 「その娘さんは、幹事長の後継ぎになる見込みはないの?」


 「俺より15歳近く年上の異母姉なんだけど、すでに文筆業で成功していて、政治には全く興味がないみたい。もう幹事長もあきらめている」


 「それで優雅くんに、後継者の座が」


 「都合良く俺はこんな頭脳を持って生まれてしまって。……人並みに生まれたかったな」


 抜群の記憶力に理解力。


 常にオール五。


 大して勉強しなくても、学校の勉強程度なら全て頭に入っていくという、羨ましい能力。


 「贅沢じゃない?」


 美月姫はため息をつく。


 「みんな必死に頑張って勉強しても、なかなか身につかないのに。優雅くんは贅沢だよ。普通の人なら一生手に入れることの叶わない能力を、生まれつき持っているんだから」


 「それゆえ幹事長に後継者として期待され、自分の思い描くものとは違う未来を与えられる」


 「……」


 「そんな未来なんていらない。こっちで美月姫とのんびり暮らしたいんだ」


 優雅は美月姫を腕の中に閉じ込めた。
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