四百年の誓い
 美月姫より九歳年上の京は、立ち振る舞いが非常にスマートな青年。


 丸山乱雪の甥という血筋をひけらかすこともなく、常に控えめで穏かで。


 レディファーストも身についていて、ドアを開ける時や椅子に座る時などは、先に美月姫にさせる。


 丸山の差し金とはいえ、こんな素敵な男性に親切にされて、世間一般からすると非常に幸せなことなのは美月姫にだって理解できる。


 しかし、慣れない和服を身にまとい、歩行さえ四苦八苦していた美月姫は。


 いくら丁重に扱われても、京と二人きりの空間に居心地の悪さを感じていた。


 優雅のことを隠したまま、丸山の思惑通りに京との交際を開始するわけにはいかないだろう。


 美月姫も心苦しい。


 何とかしてお断りしなければならないのだ。


 丸山の圧力を受けようとも。


 たとえ周囲の人たちに、迷惑をかけるのだとしても。


 ただこの京があまりに非の打ち所のない男性で、美月姫はいつどうやって切り出すか、最善策が見つけられずにいた。
< 157 / 395 >

この作品をシェア

pagetop