四百年の誓い
 「それにしても最近のガキどもはとんでもねえな。おとなしい顔して親をだますのみならず、政治家の前でも平気で嘘をつく」


 「どういうことですか」


 「お前が一番、分かってるだろ」


 「……」


 さっきまでの誠実そうな男性と、今目の前にいる冷笑を浮かべた男。


 別人だと思いたかったし、もしかしたらいつの間にか入れ替わっていたんじゃないかって信じたかった。


 だけどどう見ても、同一人物……。


 「……嘘をつくのは、あなたも一緒じゃないですか?」


 「ん?」


 「さっきみんなの前では、散々猫をかぶって。今のその態度。幹事長の前でも同じように振る舞えますか?」


 「こっちが俺の本性だよ。疲れてきたから素のままになることにした。お前みたいな馬鹿女をだますには、おとなしくしてろって幹事長にも指示されたんだけど」


 「失礼な。私、初対面の人にそんなこと言われる筋合いは」


 「初対面? もう何度も会ってるだろ」


 「え?」


 「初対面はお前を大学帰りに待ち伏せした時で、二度目は……」


 「あ……」


 美月姫は理解した。


 この男、丸山の秘書として常にそばに仕えていた、眼鏡の男だ。


 黒人ボディーガードと一緒に。


 今は眼鏡をかけていないので、同一人物だとは気がつかなかった。
< 159 / 395 >

この作品をシェア

pagetop