四百年の誓い
 「思い出した、あの時の……」


 丸山幹事長が、大学帰りの美月姫を待ち伏せした時。


 そばにいた黒人ボディガードのほうが目立っていたため、そちらの記憶のほうが鮮明だったが。


 丸山の背後に控えていた、若い秘書。


 眼鏡の奥の冷たいまなざしが印象に残っているが、それが京だった。


 雰囲気が180度異なるため、同一人物だとは全く気がつかなかったが……。


 「どういうつもりなんですか。別人を装って、こんな手の込んだ策略で」


 「幹事長のご意向だ。好青年を装って、お前をたぶらかせと」


 「やっぱり」


 予想通りだった。


 「優雅とお前を無理矢理別れさせた場合、お前に騒がれても厄介だから、災いの芽は今のうちに摘んでおこうってことだ」


 「もしもそうなったとして。仮に私が騒いだとしても。権力で揉み消すんじゃないですか」


 「そりゃそうだが。余計なトラブルは少しでも避けておきたいのが、こちらとしても本音なんでね。だから俺の出番になった」


 淡々と会話は続けられる。
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