四百年の誓い
 「そのためにわざわざこんな。函館と東京を行き来して、周囲まで巻き込んで」


 美月姫の父親の職場関係なども巻き込んでの、大規模なお見合い計画。


 息子の将来のためにそこまで腐心する丸山の行動力に、美月姫は一種の敬服をせざるを得ない。


 「優雅のためだったら、幹事長もこれくらいの行動は苦もなく遂行されるからな」


 「いくら優雅くんのためだからって、幹事長ほどの立場にある人が」


 「幹事長は多忙だ。お飾りの総理大臣を陰で操らなければならないから。それゆえすでに東京に戻られた。後は俺に全て任せて」


 「あなたは、どうなさるおつもりなんですか」


 「幹事長の描かれたシナリオのままに、動くのみだ」


 「シナリオ?」


 「お前にはこのままおとなしく、俺の婚約者になってもらわなければならない」


 庭園を囲む木々の葉が、風でざわざわと音を立てる。


 両親と会長はこちらの不穏な空気に気づくことなく、先ほどまでの一室で和やかにお茶をしている。
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