四百年の誓い
 「大村さんの髪の毛に、桜の花びらが付いている」


 優雅(ゆうが)は美月姫(みつき)の長い髪を撫でた。


 その時、髪の毛の中に埋もれた桜の花びらを一枚指で摘んだ。


 ……二人が再会したのは、舞い散る桜吹雪の中。


 視界を塞ぐほどの花吹雪。


 突然のつむじ風に花びらが舞い上がり、思わず美月姫は目を閉じてしまった。


 風がおさまったので目を開けてみると。


 すぐそこに優雅が立っていた。


 一年ぶり。


 あの頃よりも少しほっそりして、そして大人びた表情。


 だが紛れなく、それは清水優雅だった。


 記憶から消すことがついにできなかった、かつて好きだった人。


 初恋の人。


 ……そして、忘れ得ぬ人。
< 2 / 395 >

この作品をシェア

pagetop