四百年の誓い
 「う、うん。いたよ」


 突然父の口から発せられた優雅の名前に、美月姫は混乱する。


 隠し続けている優雅との関係、やはり両親に気付かれているのだろうかと不安になる。


 真実を知られるのが怖い。


 「どこの大学行ったんだっけ? まあ父親の名を出せば、どこでも入学可能だろうけど」


 心配は杞憂に終わったかとほっとしたが、まだ油断はできない。


 「東大。一般入試で」


 自然体を装い、答えた。


 「東大? そうか、本当に頭がよかったんだな。裏口入学を疑っていたけど、さすがに東大では幹事長の力をもってしても、どうにもならないよな」


 その後もしばらく幹事長の話をしていたが、父はお風呂に入ってしまったので、美月姫はまたソファーに横たわりながら週刊誌を熟読。


 最近の丸山の政治姿勢を細かくチェック。


 10時台のニュースでもおさらい。


 やはり丸山は、強引な手法で自らが練り出した法案を通そうとしている。


 生き急いでいる。


 父は今の丸山幹事長をそう表現した。


 まさにその通りで、焦って自分の思い通りの社会を作り上げようとしている。


 来たるべき優雅への権力継承の時期を目指して、周囲が見えなくなるほどに急いでいるのか。
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