四百年の誓い
***


 それから程なくして。


 美月姫は久しぶりに、母校・紅陽(こうよう)学園の門をくぐった。


 夏休み明けの、土曜日の母校。


 学園は深い緑色の木々に覆われていた。


 昨日のうちに担任だった吉野圭介にはメール連絡して、出勤しているのを確かめておいた。


 会うのは桜の季節以来。


 「シスターになりたい」などと口走って別れ、その直後に優雅に再会。


 たちまちにして恋に溺れ、俗世から身を置きたいと願っていた自分とは対照的な日々を送っている。


 そして。


 かつて優雅に置き去りにされた悲しみを埋めようともがくあまり、圭介を身代わりにしようとした過去。


 あれほど圭介に執着していたのに、優雅に再会した途端すぐに身を任せた自分の変わり身の早さを恥ずかしく思い、それ以降なかなか圭介に会うことができずにいた。


 だが今日ようやく、懐かしい校舎の門をくぐる決意をした。
< 273 / 395 >

この作品をシェア

pagetop