四百年の誓い
 「先生……!」


 久しぶりに圭介の顔を見ると、美月姫は駆け寄って抱きつきたくなる衝動を抑えられなかった。


 「大村」


 社会科準備室の窓際に一人立っていた圭介は、驚きながらも美月姫のなすがままとなっていた。


 「やめなさい。誤解を招くぞ」


 「だって……」


 懐かしい圭介の温もりが伝わってきて、美月姫は離れられなかった。


 「久しぶりだな。元気そうで」


 「先生も」


 ようやく美月姫は体を離した。


 「最後に会ったのは、桜が満開の頃だったな。今はもう夏の終わりだから」


 「すみません。すっかりご無沙汰しちゃって……」


 窓から差し込んで来る晩夏の光に、時の流れを感じる。


 「清水とは、その後どうなった?」


 圭介が優雅とのことを尋ねて来た。


 「……」


 美月姫はどことなく恥ずかしくて、答えられずにいた。


 「あいつが約一年ぶりに連絡をしてきた時は、本当にびっくりしたよ。その時大村のことにも言及していた」


 「私……」


 「あいつと付き合ってるんだろ? 幸せそうで何よりだ」


 圭介は美月姫を見つめ、微笑んだ。
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