四百年の誓い
 「ごめんなさい……」


 圭介と静香の仲に水を差してしまったと思い込んでいる美月姫は、すまなそうにうつむく。


 「だから、俺と初芝は何でもないんだ。大学の同級生で、学園の共学化により偶然同僚になった。それだけだ」


 そう言い切って再度、崩れたケーキを見つめた。


 (一人暮らしの男の家に、こんな大きなケーキ。いったい何のつもりだったのか)


 「一緒に……食べたかったんじゃないですか。初芝先生は」


 「俺と?」


 「……」


 美月姫はそっと頷いた。


 クリスマスには少し早い。


 今まで食べ物を差し入れられたことは、一度もなかった。


 それがよりによって今日、美月姫のいる前で……。


 圭介は困惑すると同時に、このケーキをどうするか、途方に暮れた。


 「せっかくだから、食べるか」


 圭介は包丁を取り出し、刃の部分に熱を加え、分割しやすいようにした。


 「お前も、一口食べるか?」


 「それは初芝先生の本意ではないとは思いますが……」


 とても圭介一人で食べられる量ではないので、美月姫も一片もらうことにした。


 美味しかった。
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