四百年の誓い
 「優雅くん!」


 美月姫は画面を注視しているのがつらくなって、目をそらした。


 あの動画を見ているだけでは、怪我の程度が分からない。


 ただあの顔色と流血。


 かなりの深手を負っていると想像された。


 暴漢に襲われる幹事長を、とっさにかばったのだろうか。


 親をかばうというのもあるし、目の前の凶行を見過ごすわけにはいかなかったのかもしれない。


 たとえ自分の身を犠牲にしても。


 「私……」


 優雅の自己犠牲を目の当たりにして、美月姫は自己嫌悪に陥った。


 (私……。幹事長が死ねばいいって、一瞬とはいえ願っていた)


 優雅との仲の最大の障壁である、丸山乱雪。


 幹事長さえいなくなれば、優雅との間を邪魔するものはなくなる……と考えたことがあった。


 幹事長がこの世から消えれば。


 一瞬とはいえそんなことを願ったのが今回の凶行を引き起こした原因のような気がして、美月姫は自身を責め続けた。
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