四百年の誓い
白い奇跡
***


 たった今、新年を迎えた。


 美月姫は出し忘れた年賀状を投函しに、近所のポストへ赴き、帰るところだった。


 除夜の鐘を聞いていた頃に、降り始めた雪。


 新雪がうっすらと街を覆い、踏みしめる度にキュッキュッと音がする。


 真っ白な雪に足跡が刻まれることによって、新たな一年の訪れを感じる。


 「……」


 コートのポケットから携帯電話を取り出し、着信がないかどうか見る。


 何も無いのを確認し、そっとため息をつく。


 あれ以来、優雅からの連絡が全くない。


 絶え間なく携帯電話をチェックしているのだけど、そのたびに失望に変わるだけ。


 事件から十日近くになり、その間にクリスマスも過ぎ、新年を迎えてしまった。


 未だに連絡を取れない状態にあるのだろうか。


 情報がないのが怖い。


 丸山幹事長に関しては、ニュースなどで「峠を越えた」「危機を脱した」などと状況が伝わってくる。


 しかし一緒にいて事件に巻き込まれた優雅に関する情報は……ない。
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