四百年の誓い
 京との通話を終え、美月姫はため息と共に携帯電話を再びコートのポケットの中にしまい、歩き続けた。


 新年早々、除夜の鐘の鳴っている間の京との通話。


 本来なら新年初の会話は、優雅とのものだったはずなのに。


 会うことすら叶わない。


 今すぐに会いに行きたい思いを抑えながら、優雅の無事を祈りつつ、待っていようと美月姫は決意した。


 京は「命に別状はない」と優雅のことを説明してくれたけど、まだ余談は許さない状態らしい。


 狙われた幹事長よりもひどい傷を、庇った優雅が負ってしまう結果となった。


 どうか万が一のことにはならず、無事に回復して退院してほしい。


 今までの生活を取り戻してほしい。


 たとえ生涯を共にできなくてもいい、優雅が無事でさえあれば、と願った。


 この世界のどこかで、二人別々であろうとも生きている、それだけでよかった。


 自宅の玄関前に戻った時だった。


 ポケットの携帯が震えているのを感じた。


 (着信?)


 美月姫は急いで携帯を取り出し、開いた。


 「公衆電話……?」


 ディスプレイには「公衆電話」の表示。


 不安と期待、両方を抱えながら美月姫は通話ボタンを押した。
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