四百年の誓い
 そうだった。


 優雅の記憶力は尋常ではない。


 電話番号すなわち11桁の数字など、たやすく記憶できるのだろう。


 そしてそれらは積み重なり、まるで電話帳のようなデータが優雅の脳にはおそらく。


 「まだもう少し病院には世話になるし、その間携帯も新しいものを調達できないから、なかなか連絡できないと思うけど……」


 毎日一度は、病院の公衆電話から連絡をすると約束された。


 「無理しないでね。まだ優雅くんだって回復していないし、それに幹事長、」


 「幹事長は同じ病院の最上階、VIP室に入院中だ」


 命は取り留めたが、依然として予断を許さない状態らしい。


 また変な連中が乱入してきたら大変なので、24時間完全警護の下、治療に専念している。


 「本家の人たちがお見舞に来ているし、俺や母さんは顔を出せない」


 「……」


 本妻やその娘たちが出入りしているので、優雅たちは憚って会えずにいる様子。


 「じゃ、明日のこの時間にまた」


 「予定空けて待っているから」


 終話ボタンを押すと同時に、美月姫の瞳から涙が溢れた。


 嬉しさと悲しみが混ざった涙。
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