四百年の誓い
薄墨色の誓い
***
白い雪が溶け出し、土ぼこりが春の兆しをもたらす。
徐々に気温が上がり出し、茶色の大地が草で覆われ始める。
それから程なくして、桜の季節。
南日本の温暖な地方から遅れること、一ヶ月以上。
ようやく北海道に桜前線が上陸する。
この年もゴールデンウィークの序盤に、北海道南部に位置する松前町でまず開花宣言。
遅れること数日、函館市でも桜が咲き始めた。
暖かい日々が続いたため、一週間を経ずに満開に達した。
「あ、花びら」
満開の桜並木を歩いていた美月姫は、舞い落ちてきた一枚の花びらを掴まえて手のひらに乗せた。
薄墨色の綺麗な花びら。
この辺りでは珍しい色の桜。
……ふと不安になる。
これがもしかして、散り始めの一枚ではないかと思うだけで。
今この瞬間に桜は盛りを過ぎて、散り始めに転じたのではないかと予感してしまって。
「……」
花が咲き始めるまでは楽しみなのに、咲き始めた途端に散った後のことをつい考えてしまい、不安に駆られるようになったのはいつからだろう。
美月姫はそんなことを考えながら、歩き続けていた。
白い雪が溶け出し、土ぼこりが春の兆しをもたらす。
徐々に気温が上がり出し、茶色の大地が草で覆われ始める。
それから程なくして、桜の季節。
南日本の温暖な地方から遅れること、一ヶ月以上。
ようやく北海道に桜前線が上陸する。
この年もゴールデンウィークの序盤に、北海道南部に位置する松前町でまず開花宣言。
遅れること数日、函館市でも桜が咲き始めた。
暖かい日々が続いたため、一週間を経ずに満開に達した。
「あ、花びら」
満開の桜並木を歩いていた美月姫は、舞い落ちてきた一枚の花びらを掴まえて手のひらに乗せた。
薄墨色の綺麗な花びら。
この辺りでは珍しい色の桜。
……ふと不安になる。
これがもしかして、散り始めの一枚ではないかと思うだけで。
今この瞬間に桜は盛りを過ぎて、散り始めに転じたのではないかと予感してしまって。
「……」
花が咲き始めるまでは楽しみなのに、咲き始めた途端に散った後のことをつい考えてしまい、不安に駆られるようになったのはいつからだろう。
美月姫はそんなことを考えながら、歩き続けていた。