四百年の誓い
***
……。
「えっ、朝鮮出兵?」
「我が福山家も出陣することとなった。私は領国を離れられない兄の名代として出陣する」
福山冬悟(ふくやま ふゆさと)の突然の言葉に、月姫(つきひめ)は驚いて顔を上げた。
新緑が萌える雲ひとつない午後、冬悟の表情が翳る。
「どうして海の向こうにまで、侵略をしに行かなければならないのですか?」
先年。
豊臣秀吉は小田原にこもる北条氏を攻めて降伏させて、全国統一を成し遂げたはず。
(これでもう戦はなくなると思ったのに、なぜまた……)
「もう日本は、全国統一が成された。新たな領土を確保して、臣下への褒美を確保しなければならないのだろうな」
「冬悟さま朝鮮の地で、罪もない朝鮮の人々を斬らなくてはならないのですか?」
月姫は冬悟を見つめた。
冬悟には出陣してほしくない。
命を危険にさらすことなど望まない。
そして……罪もない人々を殺めるなど、やめてほしい。
「姫、私は」
「行かないで……!」
月姫は冬悟にすがりついた。
「天下や領地、そんなもの要りません。最小限の蓄えがあり、誰もが幸せに生きられる世の中、それだけで私は十分です」
……。
「えっ、朝鮮出兵?」
「我が福山家も出陣することとなった。私は領国を離れられない兄の名代として出陣する」
福山冬悟(ふくやま ふゆさと)の突然の言葉に、月姫(つきひめ)は驚いて顔を上げた。
新緑が萌える雲ひとつない午後、冬悟の表情が翳る。
「どうして海の向こうにまで、侵略をしに行かなければならないのですか?」
先年。
豊臣秀吉は小田原にこもる北条氏を攻めて降伏させて、全国統一を成し遂げたはず。
(これでもう戦はなくなると思ったのに、なぜまた……)
「もう日本は、全国統一が成された。新たな領土を確保して、臣下への褒美を確保しなければならないのだろうな」
「冬悟さま朝鮮の地で、罪もない朝鮮の人々を斬らなくてはならないのですか?」
月姫は冬悟を見つめた。
冬悟には出陣してほしくない。
命を危険にさらすことなど望まない。
そして……罪もない人々を殺めるなど、やめてほしい。
「姫、私は」
「行かないで……!」
月姫は冬悟にすがりついた。
「天下や領地、そんなもの要りません。最小限の蓄えがあり、誰もが幸せに生きられる世の中、それだけで私は十分です」