四百年の誓い
 「私が妻にと望むのは、姫だけだ。誰にも邪魔させない」


 冬悟ははっきりと語った。


 「だから姫のために私は、誰もに信頼される存在になりたいと思う。今回の出陣で任務を果たし、やがて姫の元へ戻ってくる」


 冬悟の任務は、九州での後方支援。


 朝鮮半島の激戦地帯へとすぐに赴くわけではないとはいえ、愛する人が戦に向かうということに対して月姫は不安を抱いていた。


 「心配いたすな。いずれ戻ってまいる。そして祝言を」


 「必ず戻ってきてください」


 月姫は不安な面持ちで、冬悟に約束を求めた。


 「私は姫を残して死んだりせぬ。もしものことがあれば」


 「え……」


 一瞬沈黙が走った。


 「言いにくいことではあるが、今この機会に姫に伝えておく。戦国の世は一段落し、太平の世が訪れたと言われているこの時代。しかし武家の生まれの私は、いつどのような事態に巻き込まれるか分からない」


 冬悟の真剣な言葉を、月姫は黙って聞き続けた。
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