四百年の誓い
 「もし私が志半ばで命を落としたとしても、後を追おうだなんて考えないでほしい。姫は自らの天命を全うしてほしい。もしもこの世で添い遂げなければ、次の世でまた姫を探し出して、再び愛すると誓うから」


 「そんな不吉な話、聞きたくありません」


 出陣を前に、自らの死を予言するような話を始めた冬悟から月姫は目を逸らし、背を向けた。


 「考えたくもありません。そんな恐ろしいこと……」


 「確かに、死について語るのは禁忌かもしれぬ。だがいつどうなっても目の前のことを受け入れられるよう、姫も常に覚悟を持って過ごしてほしい」


 「……それが、武家の妻の宿命であると言うのなら」


 武家の妻……との言葉に、冬悟は月姫は自らの求婚を受け入れたのだと判断した。


 「姫……!」


 「いつ何が起ころうとも、取り乱して冬悟さまの御名を汚さないよう努めます。ですが」


 月姫はようやく顔を上げ、冬悟を見つめた。


 「私を一人にするだなんて言わないでさい」


 「姫を泣かせたりはしない」


 「冬悟さま……」


 冬悟は再度、月姫を抱き寄せた。
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