四百年の誓い
***


 また別の、月が金色に輝く夜。


 庭園ではしゃぎ回っていた月姫は、桜の木の下で冬悟に捕まり、抱きしめられてしまった。


 「冬悟さま、苦しい」


 「兄上がお前を狙っているかもしれない」


 「まさか、そんな馬鹿な」


 「兄上に命じられたら、私は逆らえない。だからお前を早く、私のものにしてしまいたい」


 「私はどんなことがあろうとも、冬悟さまのお側を決して離れません。離れる時は、死ぬ時です」


 月姫もまた、冬悟と結ばれる日を指折り心待ちにしていた。


 その後の運命など、知る由もなく。


 「綺麗な月……」


 月姫はふと空を見上げ、つぶやいた。


 満開の桜に合わせたかのように、満月が輝いていた。


 若干、朧月夜。


 ほんのりと桜を照らし、その光景はとても幻想的だった。


 「月は、お前の象徴だな」


 冬悟が提案する。


 「これを機にお前に新たな名を授けるというのはどうだ?」


 「新たな名?」


 「永久に変わることのない、私だけの呼び名をお前に与えたい」


 「それは?」


 「月光姫」
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