四百年の誓い
 一方美月姫は……。


 大学卒業後、優雅の江別移住に合わせるかのように、江別市内の陶芸センターに就職した。


 そこでは陶芸作品の展示の他、市内で発掘された縄文式土器の復元・展示作業も行なわれている。


 美月姫は大学時代に習得した土器の鑑定作業や、復元図の作成などの作業に携わっていた。


 そして休みの日は、優雅の作業場で手伝うことも。


 ……優雅が大学四年生になる直前に、彼の母・清水紫が急死した。


 表向きは薬の飲み間違いによる事故死。


 丸山乱雪の襲撃事件以降、ますます精神的に不安定さを増していた彼女は、酒に溺れるようになり。


 夜の不安から逃れるために睡眠薬を過剰摂取。


 そして二度と目覚めなかった。


 自殺ではないかとの噂もあったが、丸山乱雪が最後の権力を駆使してもみ消したようだ。


 優雅は母を失った。


 母子二人きりでこれまで生きてきたゆえ、優雅の寂寥感もかなりのものだった。


 紫の三回忌が過ぎるのを待って、優雅は美月姫と籍を入れた。


 「清水」の名前を捨てて新たな人生を歩むことを望んでいた優雅は、美月姫の「大村」家の養子となった。
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