四百年の誓い
 大村優雅。


 新たな名前を手に入れた優雅は、過去と決別した。


 地元では神童。


 上京後は、父である与党幹事長(当時)・丸山乱雪の後継者となるべく教育を施され、いずれは父親の地盤を継承し。


 やがては総理大臣の地位も狙える逸材として、期待されていた。


 しかし。


 その丸山乱雪は、強引な手法があちこちで反発を招き、ついには暴漢の刃に倒れた。


 幸いにして一命は取り留めたが、体に受けたダメージは大きく、次の選挙には出馬せず、任期満了と同時に第一線から身を引く決意をした。


 理想を貫くことの厳しさを身をもって体験した丸山は、優雅を後継者にすることをためらい始めた。


 「お前は、お前の好きな道を選びなさい」


 そのまますんなり丸山は、優雅を後継者の地位から解放した。


 優雅は自由を手にし、丸山が一代で築き上げた丸山王国は解体の道を歩み始めた。


 絶対君主・丸山乱雪を擁する王国が、こんなにもあっさり消滅しようとは。


 誰しもが驚きを隠せなかった。
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