四百年の誓い
 王国の呪縛から解き放たれた優雅は、今まで手にしたことのない完全なる自由を手に入れて戸惑った。


 カゴの中の鳥は、自由というものを知らずに生きてきたから。


 自由に大空を羽ばたこうとしたものの、やはり一人では心細くて……美月姫の元へと降り立った。


 一人では飛び続けることはできなかった。


 二人で翼を共有して生きていくことを望んだ。


 ……それから幾つかの春が過ぎ。


 二人が幸せになったのは年賀状などを通じて圭介は知っていたが、今回こうして詳細な知らせが届いた。


 (あいつ、高校生の頃から、陶芸を専門的にやりたいって常々語っていたな)


 当時を思い起こした。


 進路志望をなかなか明確に示さない優雅に対し、業を煮やした圭介が催促したら、「俺、陶芸をやりたい」って気まぐれに答えてきた。


 子供の頃から習っていて、好きだったようだが。


 東大を目指せる逸材なんだから真面目に考えろと注意したこともあったが、まさか陶芸で身を立てる夢を実現させるとは。


 圭介ははじめてそれを聞かされた時、かなり驚いたものだった。
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