四百年の誓い
 母・紫の死去に伴い、一人息子の優雅は母の遺産を相続した。


 丸山により与えられたマンション。


 預貯金。


 キャバレー「夕映霞」の経営権は売却したので、その収入もあった。


 そして父である丸山乱雪からの、いわば「手切れ金」。


 丸山は北海道内に数々の不動産を所持していたが、それらは優雅に与えられ、事実上の独立資金、同時に結婚持参金と化した。


 優雅はそれらを、有効に活用。


 育ての親である北海道事務所長の水上の助けを借りて、処分できるものは皆売却してしまった。


 片づけが終わり、贅沢しなければ一生暮らしていけるほどの金額が優雅の手元に残ったが。


 それを食いつぶして道楽人生に身を落とすことはせず、もしもの時のために貯蓄しておいた。


 さすがに窯の建設資金には母の遺産を使わせてもらったが……その後は自分の力で生きていこうと、大学卒業後は一度就職した。


 当初は仕事をしながら、陶芸は趣味の範疇でスタート。


 徐々に生活の中の陶芸の比率は高まっていき、今では退職しても、陶芸に関する仕事だけで暮らしていけるようになっていた。
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