四百年の誓い
***


 「松前、そして函館は、もうとっくに満開でしょうね」


 二人の住まいのある江別市の桜は、そろそろ八分咲きになった頃だった。


 美月姫は優雅と二人、市内の公園の桜並木を歩いていた。


 松前町の福山城周辺の桜並木には比べ物にならないほど、スケールは小さい。


 だけど二人には、素朴な並木で十分だった。


 二人で花を愛でることができるのならば。


 ゴールデンウィークの半ば、二人は札幌に食事に出かけた帰り、公園に車を停め夜桜見物を始めた。


 公園内を散策。


 ライトアップされた桜は綺麗だった。


 故郷や福山城が思い出される。


 二人は手を繋いだまま、桜の木の根元に座った。


 花を無数につけた枝が垂れ下がっている。


 そして花の向こうには、おぼろげに春の星たちが銀色に輝いている。


 「北斗七星が昇ってきたね」


 北の空は春を迎え、華やかに星座たちに彩られていた。


 そのまま二人はしばらくの間、言葉もなく夜空を眺め続けた。
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