四百年の誓い
***


 「冬悟さま、空に銀色の星たちが瞬いております」


 月姫が夜空を指差した。


 下弦の月はまだ東の地平線付近。


 月の光の影響を受けていない夜空を、春の星座たちが支配していた。


 「まことに。月のない夜は寂しいものと思っていたが」


 冬悟もしみじみと夜空を見上げながら、つぶやいた。


 「まるで金銀を散りばめたようだ」


 まだ都市の光などによる光害のないこの時代、ぼんやりと天の川が夜空に横たわっているのも見えた。


 「北天には、北斗の七つ星も見られます」


 「不思議だな。南天の星たちは季節によって刻々と姿を変えていくのに、北天の星たちは北極星の周りを回っている姿を、一年中目にすることができる」


 季節によって刻々と姿を変えていく。


 冬悟の何気ないその一言を耳にした時、月姫は急に切なさを覚えた。


 「……姫? いかがした」


 月姫が急に無言になったので、冬悟は不思議そうにその顔を覗き込んだ。


 「姫が悲しそうにしていると、私まで悲しい気持ちになる。なぜそのように悲しげな表情を見せるのか、話してくれ」
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