四百年の誓い
***


 ……。


 「いやだ、寝ちゃった」


 風が首筋に触れて、美月姫はびくっと飛び起きた。


 そして慌てて優雅を見た。


 優雅も同様だった。


 二人、桜の木の下に並んで腰かけながら、うたた寝をしていたようだ。


 「なんか夢を見ていた」


 腕を伸ばし、優雅はのびのびした。


 「私も。どこかで見たような夢だけど」


 何となく覚えてはいるのだけど……二人で幸せになるべきだということを、誰かが教えているような夢だった。


 「優雅くん、疲れているんじゃない?」


 独身時代の気持ちが抜けず、未だに美月姫はくん付けで呼んでいる。


 優雅は連休の前半も、陶芸仲間の展覧会に顔を出すために、関東地方へ出向いていた。


 今日の夜と明日一日だけが、わずかな休日。


 「いつものことだよ。頑張れる時に、可能な限り頑張っておかなくちゃ」


 ようやく向上してきた知名度。


 今こそ攻めの姿勢が大切と、優雅は活発的に創作活動に励んでいる。


 その分だけ多忙を極め……休日も関係ない毎日だった。
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