四百年の誓い
 「違う。この前取材の時」


 「取材?」


 「……」


 美月姫はぽつぽつ語り出した。


 先日、自宅の窯の前で優雅は取材を受けていた。


 製作のスタンスや、本格的に陶芸を始めた経緯など。


 そして家族の話になった。


 優雅は実の両親の話題は避けているので、話に出せるのは美月姫のことのみ。


 「えっ先生、ご結婚なさっているのですか?」


 驚きを隠せないレポーター。


 まだ若くて華やかな雰囲気の優雅は、家庭を持っているようにはまだ見えない。


 ここでさりげなくレポーターが口にした一言。


 「早いですね」


 悪気は無いのだろうけど、たまたま廊下で耳にしていた美月姫は、やはり心穏かではない。


 それ以外にも、優雅が講師を務めるカルチャーセンターのおばさま。


 優雅のファンも多い。


 結婚してると知って、がっかりされることも多い。


 左手に結婚指輪を付けて、期待させる前に既婚であることを示すように頼んでも。


 「昔、ピアスのし過ぎで皮膚がかぶれたから、アクセサリーは苦手なんだよね」


 聞く耳を持たない。
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