四百年の誓い
 あの時。


 つまり二人の未来のない関係に絶望した優雅が、美月姫を手にかけて自らも後を追おうと死を願った時。


 「安易な答えを選ばないで、本当によかった……」


 優雅の胸に頬を埋めながら、美月姫がつぶやいた。


 優しく抱きしめられ、心からの安らぎに満ち足りて。 


 生きていてよかったと、心の底からそう思える。


 「ねえ、これから函館に行かない?」


 「えっ」


 「明日、休みだしさ」


 「今からだなんて。着いたら夜中じゃない?」


 ここから函館までは、約250キロ。


 上(高速道路)を通っても下(国道)を通っても、結局四~五時間くらいはかかるだろう。


 「それから松前の、福山城にも行こう。あそこが俺たちの原点のような気がするんだ」


 「私も行きたいけど、運転大丈夫? 長距離運転だよ」


 「大丈夫。まだまだ若いんだから」


 優雅はいたずらっぽく笑って、美月姫にそっとキスをした。


 「さ、行こう」


 「了解!」


 先に駐車場へと向かって歩き出した優雅の後に続き、美月姫も歩き出した。
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