四百年の誓い
***


 「姫が死んだのは、そのほうらのせいだ!」


 「殿っ」


 「そのほうらの顔など、見たくもない! 消えうせろ! 二度と私の目の前に姿を見せるな」


 ……やり場のない悲しみを、絶え間なく姫の両親や育ての親にあたる重臣・安藤夫妻にぶつけ続けた。


 福山家第三代当主としての誇りはどこへやら。


 ここにいるのは、死んだ女への追慕と未練ゆえに我を忘れた、ただの情けない男にすぎなかった。


 「消えうせろ」「二度と姿を見せるな」


 取り乱した際に、思わず口にした言葉。


 冬雅は自らが発する言葉の重要性すらも慮ることができなくなっていた。


 殿に「消えろ」と言われるのは、事実上の死刑通告だった。


 いたたまれなくなった安藤夫婦、明石夫婦、そして彼らの一族や家臣たちが相次いで自害。


 福山城内は大混乱に陥った。


 冬雅の配慮なき振る舞いを非難する声も、どこからともなく聞こえてきた。


 (私が悪いのか……。ただ月光姫を失った悲しみだけだったはずなのに……)


 全てが終わってから、冬雅は後悔の嵐に襲われた。
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