四百年の誓い
 「美月姫」


 「そんなことしたら、今までのご両親の期待はどうなるの?」


 「いくら期待されても、俺には向いていないんだから仕方ないよ」


 「まだ決め付けるのは早いんじゃない? それに優雅くん、せっかくそんなに優れた能力を持っているのに、もったいないよ」


 「能力があるイコール、政治家に向いているとは限らないだろ?」


 「……」


 「東京暮らしに、疲れた」


 優雅のその言葉に、美月姫は思わず振り返った。


 寂しそうな表情。


 与党幹事長の後継者の座が約束され、誰もが羨む人生が約束されているはずなのに。


 孤独の色を強く映し出す。


 「どんなに恵まれた日々を送っていても、美月姫だけが足りない」


 再びその腕で美月姫を包み込む。


 何もかも許されるのなら、この人と運命を共にしたいと美月姫も心のどこかで願っている。
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