四百年の誓い
 ……。


 夜明けが近づいているのを、薄く開かれた窓の外の空の色で感じて、美月姫はそっと優雅の寝顔にキスをした。


 「離れていても、心さえ繋がっていれば大丈夫、だなんて……。ここまで好きになってしまうと、もうそんな言葉じゃ満たされないんだ」


 キスで目覚めた優雅は、美月姫を抱いたまま耳元で告げた。


 「いつもこうしていないと、不安でたまらない」


 また強く抱きしめ返す。


 「美月姫の温もりを感じていると、時が止まればいいと願う」


 「私も……」


 身を委ね、優雅の全てを受け入れていると。


 今後待ち受けているものが果てしない悲劇であろうとも、何も怖くないように思える。


 優雅の手を離さずにいさえすれば。


 「だからずっとそばにいて」


 いつも幸せと表裏一体の不安を感じている美月姫だけど、不安なのは自分だけじゃなく、優雅も同じなのだと実感した。


 そして今の自分にできるのは、抱き合うことで互いの不安をかき消すことだけなのだと悟った。
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