四百年の誓い
 「朝早くから、何の用だ」


 ようやく落ち着きを取り戻した優雅は、水上に尋ねた。


 「どういうもりだ。こんな所にまでのこのこと。空港まで送るって、俺これから紅葉学園に用事があるんだけど」


 珍しく淡々とした口調。


 言葉の節々には怒りが込められている。


 「幹事長からのお達しです。優雅さまは直ちに東京に戻られるようにと」


 「帰りの便は夕方近くだから、今から空港行っても無意味だけど?」


 「幹事長のご命令で、そちらの予約はすでにキャンセルし、午前中の便に切り替えました」


 「なんでそんな勝手なことするんだ!」


 そこまで口にして、優雅ははっとした。


 幹事長の命令ということは、すでに丸山乱雪は全てを知っていて、自分たちを引き離そうとしているのか。


 「そうか。幹事長からの要請で、お前は俺の監視をしていたのか。ご苦労さんだな日曜日の朝早くから」


 「事情を悟られたのならば、直ちに助手席までお乗りください。大村さまは近くの駅までお送りいたしますゆえ、後部座席に」


 「断る、と言ったら?」


 「このままでは優雅さまのみならず、そちらの大村さまにとっても、面倒な事態が起こり得ます」


 「え、私?」


 美月姫は混乱を隠せぬまま、水上を見つめた。
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