四百年の誓い
灰色の憂い
***


 ここは、どこだろう。


 穏かな春の風。


 風に舞い散る桜の花びら。


 程よく甘いお酒。


 華やかな着物を身にまとった娘たちが、見事に咲き誇った桜を十分に見渡せる広間に集っている。


 「冬悟(とうご)さまは、輝く太陽のような方ね」


 誰かが口にする。


 「今日の宴の主役は、誰が見ても冬悟さまよ」


 そうとまで言い切り、そして……。


 「冬悟さまはまさに、この国の支配者となるべく生まれてきたような方ね」


 「あのような非の打ち所のない弟君がいらっしゃると、殿も心中穏かではないでしょうね」


 「殿も素敵な方だけど、冬悟さまのような華やかさは持ち合わせていないのよね」


 「太陽の眩しさに、かなうものはないのだから……」


 「ちょっと。そういうことをあまり大声で言わないほうが」


 美月姫は思わず、仲間たちに忠告した。


 「あら、あなた何言ってるの」


 仲間は笑って答える。


 「冬悟さまが一番大切にしてらっしゃるのは、他ならぬあなただというのに。月姫(つきひめ)さま」


 ツキヒメ?


 戸惑っているうちに視界が暗くなり、美月姫は目を覚ました。
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