四百年の誓い
***


 「会いたかった……」


 六月最初の土曜日の夜。


 札幌駅から徒歩数分のホテルの20階。


 街並みを十分に見おろせる部屋で、美月姫は優雅を抱きしめた。


 以前とは違い、丸山幹事長に関係を隠す必要はなくなった。


 あくまで「期間限定の交際」にすぎず、完全に許されたわけではないものの、人目を避けることなく堂々と二人で歩けるようになっていた。


 ここ二週間ばかり、美月姫は優雅とのこれからのことを考えるために、不安に押し潰されそうだった。


 最近の札幌は、連日曇り空と雨が続いている。


 以前は梅雨などなかったはずなのに、これじゃまるで梅雨の季節。


 灰色の空模様にも似た、美月姫の憂鬱な心。


 それらを全て消し去りたくて、優雅を強く抱きしめた。
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