二人の穏やかな日常

「話していくうちにそんな思いが強くなって、落ち着いてるけど隆二くんと喧嘩してるときとかは子供っぽくて、それも可愛くて」
「……」
「前原さんがデートするって知ったときは内心すごく焦って、たしかにお洒落した前原さんは可愛かったけど、なんでそんなお洒落するんだって腹立ってました」
「……全然態度に出てなかったですけど」


そんなの、二十四にもなって、彼女でもない人にそんな感情を剥き出しにしたらただの変な男だし、普通そんなことしたらそれからは前原さんに避けられるだろうし、それだけは嫌だった。

だから平静を装うのに、必死だった。

だけどそれをそのまま前原さんに話すのはなんだか悔しいし格好悪いから、それを省いて話を続ける。


「それでそのあと、お互いのタイプの話をしたじゃないですか」
「私が既読無視を怒らない人で、斎藤さんが束縛しない人。って話ですね」
「そうそう。あのとき〝あれ、もしかして俺たちってぴったりなんじゃないかな〟って思ったんですよ。今まで恋愛観の合う人ってあまり出会ったことなくて、だから嬉しくて」


思うに、そのときには既に俺は、前原さんに惚れていた。自覚はしてなかったにしろ。
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