二人の穏やかな日常
「で、付き合った日に言ったと思うんですけど、フランスでキーホルダー買うとき、結構葛藤したんです。で、考えてるうちに〝こうやって葛藤してるってことは、俺はもうきっと前原さんが好きなんだろう〟って、自覚せざるを得なかったです」
ひとしきり語り終わったあと、以上です、と締め括ると前原さんは黙り込んだ。
暫く黙り込んだあとに「聞いたのは私だけど、聞いたら聞いたですごく恥ずかしいです」と小さく言った。
「で、前原さんは?」
「え!?」
「僕が話したんですから、当然次は前原さんが話すべきですよね?」
「む、無理ですそんな恥ずかしいこと話せません!」
そんな恥ずかしいこと、を俺は長々と語ったのに。
「教えてください」
「無理です!」
「どうして僕を好きになったんです?」
「ちょっともう勘弁してください!」
「ねえ」
「セクハラで訴えますよ」
「え」
やっぱり、罪な女だ。