二人の穏やかな日常
②
今日は撮影だ。
朝起きて顔を洗ってご飯を済ませ、着替えようとタンスを開けたとき、力が抜けた。
靴下が全てバラバラでセットされてある。
どうせまた前原さん。
よくこんな面倒なことやってのけるな、と呆れながらなんとか同じ種類の靴下を揃えて履いて、駅まで歩いた。
駅まで来て切符を買おうと鞄の中から財布を探した。
……おかしいな。
財布はいつも鞄の中のすぐ取れるところにあるし、鞄の中はいじらないんだけど。
一瞬もしかして前原さんかと思ったけど、さすがに俺が本気で困るようなイタズラはしない。特に仕事に支障が出るようなことは。
と思い直して、奥にいっちゃったんだろう、と鞄の奥の方まで手を突っ込む。
すると何か、布のようなものが手に当たって。
身に覚えのないそれを鞄の中から出してみた。
赤く、透けた生地のブラジャーだった。
そういうときに限ってまわりには知らない人がたくさんいるもので。すれ違うサラリーマンや女子大生に変態を蔑むような目で見られた。
慌ててそのブラジャーを鞄に戻す。
よりにもよってこんな赤い透けたやつにしなくても……。