二人の穏やかな日常
「うわああああ」
反射的に前原さんに抱きつこうとしたけど、空振り。
というか振り返るとそこには、誰もいない。
「ま、前原さん!」
慌てて探す。
すると前原さんが玄関から入ってきた。
「テッテレー!」と言いながら、手には、木材で作ったプレートを持って。プレートには、テッテレー、と書いてある。
「ついに作っちゃいましたプレート。あ、ちなみにテッテレーって書いたのはテータルトンボスに倣ってです」
「いつの間に外に」
「斎藤さんがスマホを見る一瞬の隙に。ちなみにその着信、私からですよ」
そう言って前原さんは、俺の番号に発信した状態の自分のスマホを見せてきた。
「映画見る前斎藤さんがトイレ行ってる間に大急ぎで設定しました」
嬉しそうに報告してくる前原さんの手からテッテレープレートを奪い取った。
「こんなものつくるような情熱と時間は、勉強と恋愛にまわしなさい!」
「恋愛にまわしても良いんですか?私が斎藤さん以外の男の子に慕われるかもしれませんよ?」
「……それは困る」
前原さんは、何も考えずぼんやり俺の彼女でいてくれれば良い。