二人の穏やかな日常
「まぁまぁやばいな」
「どうしてやばいの?どんくらいやばいの?」
「良いか。十七歳っつうと修一とは七歳差ってことだ。つまりな、修一がお前と同じ歳のときでもその彼女はまだ生まれてねえっつうことだよ」
「まじか!やべえ!」
「やべぇだろぉ」
やばいやばいやかましい。
そのやばい、の度に俺の心には鋭い針のようなものが突き刺さる。
「てかお前彼女のこと名字にさん付けで呼んでんの?」
「うん。お互いそう呼び合ってる」
「なんかよそよそしくね?まあ女子高生からさん付けで呼ばれるっつうのも萌えるよな確かに!いや俺の好みはあくまで年上だし女は三十越えてからだけどさ!」
智輝の耳を塞ぐと、不思議そうに俺を見上げていた。
「既婚者が何言ってんだよ……」
しかも子供の前で。
ため息をついて智輝の耳から手を離した。
「修一酒は?どこ?飲もうぜ」
「じゃあ俺はオレンジジュースな!」
まったくこの親子はマイペースというか遠慮がないというか。
台所から酒とグラスを適当に取ってきた。
「はい。酒。オレンジジュースは無いから買いに行こうか」
智輝の手を引いて立たせた。
「おい修一、俺が来たら毎回オレンジジュースなんだから常に置いとけよな」
「はいはい行くよ」
「行ってらっしゃ~い」
当然のように着いてこない兄ちゃんは、嬉しそうにグラスに酒を入れていた。