二人の穏やかな日常

「前原さん、一つ聞きたいんですけど、もうおっぱいは触られてませんよね?」
「大丈夫ですよちゃんと死守しましたよ。それより私智輝くんのプロポーズに必死に怒ってくれたの、嬉しかったです」


前原さんは、いつものようにテーブルの側の地べたに座った。

前原さんは基本、ソファには座らない人だ。
落ち着かないらしい。


「それは……怒るでしょ」
「まあ最後の子供っぽい喧嘩はどうかと思いますけど」
「うっ……違うんです酔ってたんです……」
「あと……いや、これはやっぱやめとこ」


前原さんが何か言いかけて、やめた。


「何ですか気になるじゃないですか」
「いやいやちょっと」
「言ってください」
「……んー、じゃあ。あの、おっぱいもちゃんと心配してくださって、ありがとうございます。……ほらやっぱ恥ずかしいじゃないですかなんてこと言わせるんですか!」


真っ赤になってのたうちまわる前原さん。

さっき「私がおっぱい触って良いって許可するのはこの人だけ!」ともっと恥ずかしい台詞を言っていたのに、何を今更照れてるんだろう。


「前原さん、ちょっとだけ、ちょっとだけ抱き締めて良いですか?」
「え、良いですけど、まだ触らないでくださいね……?心の準備できてないんで」
「分かりました」


前原さんはソロソロと俺に近付いてきて、自分から俺の腕の中に収まってくれた。

その仕草がなんというか、ときめいた。


そっと、前原さんの背中に手をまわした。

……ん?


「斎藤さんやっぱちょっとお酒臭いですね。飲みすぎましたね」
「前原さん、あの、つかぬことをお伺いしますが」
「はい?」
「ノーブラじゃありません?」


尋ねると、前原さんはすごい勢いで俺を突き飛ばして離れていった。
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