二人の穏やかな日常
「本当に前原さんは。もう少し危機感持ちましょうよ。いくら彼氏が俺だからって油断しすぎじゃないですか?舐めてるんですか?それとも誘ってます?まあどちらにせよ、俺がどんだけ大変かちゃんと考えてください」
「はい……」
「分かってるんですか?俺だって男なんですよ。いろいろあるんですよ。でも両親からの信用は固いしそれを裏切るような真似は絶対したくないし、第一俺自身が前原さんのこと大切にしたいって思ってるから……。いくら落ち着いてるって言われたって、そりゃ確かに同世代の男よりはそうかもしれないけど、でもそんなの好きな人の前では所詮消えちゃうんですよそんな落ち着きなんて」
「斎藤さん……そんなに深く考えてくださってたんですね……」
「そうですよ!正直ね、俺も男ですから前原さんを抱きたいんですよ!でもせめて前原さんが成人越すまでは!って色々葛藤してるのに……前原さんはそんな俺の気も知らずに無防備な格好でひょいひょい家に上がり込んできて……」
きっと俺は今、この上なくだっさいだろう。
こんな格好悪い彼氏、世の中広しと言えど、なかなか見つからないだろう。
だけど前原さんはそんな俺を、すごく愛しむような目で見ていた。何なんだろう、この子は。
「もう……抱かせてください……」
とうとう、そんな本音が溢れた。
駄目だ。こんなの俺じゃない。しっかりしよう。
「でも駄目です!俺は本能に負けませんよ!俺はそこらの若造とは違うんですよ!」
また情熱を復活させた俺を見て、前原さんは楽しそうに笑った。
「はい、頑張ってください」と。
……これだから前原さんは。
本当に小悪魔だ。