二人の穏やかな日常
午後五時。
インターフォンが鳴った。
俺が学校終わったら寄ってくれるようにラインで伝えたんだけど。何故かいつもより、ドアを開ける手が震えた。
「こんにちはー。斎藤さん今日お休みだったんですね良かったですねー、お酒抜けない状態で撮影なんか出来ませんもんね。そうだこれあげます。コンビニで買ってきました」
前原さんは玄関で靴を脱いで俺にコンビニのレジ袋を手渡してきた。中を見ると、唐揚げが入っていた。
「前原さんは昨日は本当にいろいろ……すみませんでしたあとありがとうございました」
「え」
「お味噌汁、美味しかったです」
「本当ですか良かったー。斎藤さんが前うちのお味噌美味しいって言ってたから味噌だけはうちので、具は勝手に斎藤さんの冷蔵庫から拝借しちゃいました」
ああ、そういえば前に前原家から味噌借りたな。
確かに美味しかったから誉めたけど……大分前のことなのによく覚えてるな。
「テーブルの上も綺麗にしていただいて」
「いえいえそんな汚れてませんでしたし」
「あと僕昨日前原さんに説教かましたと思うんですが……絶対妙なこと口走ったと思うんですが、あんまり覚えてなくて……」
前原さんは苦笑いで、爪楊枝に唐揚げを一つ突き刺すと俺の口元に持ってきた。
いわゆる、あーん、ってやつだ。
おずおずと、いただいた。